余白と間

住宅の設計において大切にしていることは何ですか、、、と問われたら躊躇なく「余白」や「間」を大切にしたい、と答えるようにしている。家族の距離感や空間の居心地は育った環境や長い歴史の中で育まれてきた文化や習慣などで知らず知らずのうちに身についてくるものだ。「間」とは本来、人と人との距離感、会話における微妙な間合いなど、様々なシーンの中で自分にとって、または他者との関係の中での心地良い間合いを身につけるのだと思う。

住宅の設計とは家族の物語を一つ一つかたちにしてゆく作業である。与えられた与条件(敷地や予算、家族構成、生活スタイルや価値観)を目に見えるかたちで家を設計する。目に見えないもの、無意識の中の自分探しのような、自分や家族、他人に対しての思いや気遣いなどをすべて汲み取り、思いを巡らす。室と室をつないだり、組み合わせる作業の中で、それぞれの関係性を意味のあるものにしてゆくことが、住宅を設計することだと考えている。その作業の過程において「無駄を省く」「必要なものだけを残してゆく」「優先順位をつける」などを念頭に「省く」ことをやっていく。

次に隅々まで目の行き届く所のすべてに気を配ることも大切だ。すなわち「ディテール」 を考えること。ディテールを追求することは「省くことの美しさ」を追求することに他ならない。ぎりぎりの限界まで省略したものの中に深い思いや意味を込めていく。日本の文学における俳句や短歌などに通じる省略と凝縮の美のようなものである。行間や暗瑜という表現方法を用いて、伝えたい思いや感覚、イメージを閉じ込めて受け手側の想像力を喚起し、感覚や感性に問いかけるのである。

「家」は完成した時が終わりではない。住み始めることで本来の無機質な「家」という器から、人の気配や物の存在において、有機的に呼吸をはじめる。そのことを理解すると、設計者は「作りすぎない」「住み手が感性を注ぎ込む余地を残しておく」などの配慮が必要になってくる。「◯◯さんらしい家になりましたね」と皆にいわれ、住み手の個性と価値観が来訪者に伝わるような「家」になった時、私は「いい家が出来たな」と思い、設計者の役割を果たした気持ちになるのである。