はじめに

     

個人住宅を中心とするアトリエ的な小事務所をかまえ、建築設計やデザインを生業とするようになってから二十年が過ぎようとしています。これまでたくさんのお客様と対話を重ね、共に試行錯誤しながら様々な経験を積んでまいりました。その間に仕事の場で考えたこと、あるいは心に残る出来事をまとめることで、自分自身の今後の進むべき道標になるのではないかと考えました。
建築への思いや価値観など、世の中の常識とは少し違うかもしれませんが、コラムという形でここに記していきたいと思います。読んでいただいた方々の何かしらのお役にたてれば幸いです。

  • 余白と間

    住宅の設計において大切にしていることは何ですか、、、と問われたら躊躇なく「余白」や「間」を大切にしたい、と答えるようにしている。家族の距離感や空間の居心地は育…

  • 住み心地

    住み心地とはなんだろう。人生における一時の「ハレ」の瞬間ではなく、日常性、いわゆる生活そのものである「ケ」の時の極めて個人的で淡々とした時間を住まいでの住み心…

  • 家族の距離感

    職業柄、空間について想いを巡らせるのは日常のことであるが、このところ折に触れ考えるのは「家族の距離感」のことである。一つの家に暮らす人々、それは概ね家族という…

  • 小さな家のこだわり

    家をつくろうと思った人がだれでも最初に考えるいくつかのファクターの中の一つは、そのサイズだろう。一般に大きな家はいともたやすく「豪邸」と呼ばれることが多く、確…

  • 中庭のあるコートハウス

    「明るく広々とした住宅を」という希望に対して、中庭を介して家族の気配を感じ合えるような一体感のある家を提案することが多い。庭には緑を配し、アプローチを通して中…

  • 2階リビングへの思い

    20代半ばのまだ何もわからない頃、知り合いの家を設計することになった。そこは周りを住宅に囲まれた小さな敷地で、南には大きな2階建ての家が建っていた。施主は当時…

  • 暮らしの中のテーブル

    家の中の家具で、そこでの暮らしを象徴するものは何かと言えば、それはテーブルなのではないかと考えている。テーブルはおそらく多くの家で、現実として生活の中心的機能…

  • 記憶の中の階段

    私の幼い記憶の中での階段は、狭くて暗く、家の中の隅っこにあった。生活の中心は1階であり、2階は狭い廊下に幾つかの個室で構成されていた。同じ頃、目にした階段の記…

  • 家相について

    施主との打合せの時に、必ず聞くことがある。「家相」を気にしますか?という質問だ。時には施主の方から、家相を気にするのですが設計をお願いできますか、と先に言われ…

  • 書斎について

    男性の間で書斎への憧れがひろがりつつあると新聞の記事を目にした。けっして新しい話ではないが、私も同じことを感じていた。男性専門の雑誌や住宅雑誌でも時々、特集が…